「しびれ」には様々な感覚が含まれます
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右下肢のしびれを主訴に来院された清掃作業をお仕事にしている60代の男性のお話です。
一週間前、お酒を飲んでベッドで寝て起きた時から右下肢のしびれがあります。最初の3日ほどはとても痛かったのですが徐々に軽くなってはいます。痛みの部位はふくらはぎのあたりまでの時もあれば、太ももまでのこともあると、その時々で違うようです。
このあたり、これまで当クリニックの症例ファイルでご紹介したこともありますが、ある分類を思わせますね。
「しびれ」……と表現されるものにはいろんな感覚が含まれています。感覚が鈍いことも、ジンジンすることも、痛いことも、それらの混じった感覚も、ひとそれぞれに「しびれ」と表現されます。
この方も「しびれ」と表現されていますが、よくお伺いすると「痛み」が混じっているのは間違いなさそうですから、その部位がどこなのかを細かくお伺いして把握します。
既往歴には高血圧、糖尿病がありますが、糖尿病は内服も不要なレベルで、かかりつけの内科では血液検査だけ時々フォローされています。
腰椎の単純X線写真では軽度の変性はありますが、メカニカルな評価ができないような重篤な病理はありません。
可動域を確認すると、伸展も中等度に制限されていますが、屈曲が重度に制限されているのが目立ちます。腰を横にずらす動きでは右に腰を動かすときには痛みが軽快するようです。
その方向にゆっくりと、しっかりと動かすことを10回。
さぁ、もとのように真っ直ぐに立ってみましょう。いま、痛みはどうですか?
少しいいです
もう少し続けても大丈夫ですか?
はい
メカニカルな評価をする時には、表情を観察しながらこまめに声をかけて、無理をしていないか、気分が悪くなっていないかを確認しつつ続けるかどうかを決めます。
もう一度まっすぐに立ってみましょうか……いかがです?
痛くないです!
右下肢痛は徐々に軽快して最終的に違和感程度を残して痛みは消えました。
(LSGIS 反復 右下肢痛は反復とともに軽快、abolish)
エクササイズのやり方をご説明し、ご質問などにお答えして初回評価を終了しました。
翌日には特に問題がないか、微調整は必要ではないかなどチェックを行いましたが、概ね良好です。
そして初診から6日後。
もう歩くのはなんともないレベルに回復しています。なんと一日に15セットもできたそうです。
さらにご自分で負荷を増やすやり方をご説明し実際にやっていただき違いを感じていただきます。
そして初診から9日目。
もうしびれは良くなりました
いつからそのくらい良くなりました?
昨日からいいみたいです
もうどんなに動いてもしびれは出ませんか?
全然でません
ちょっと立って腰をそらすのやってみましょうか……もう響きませんか?
大丈夫です
初回評価の時には腰の伸展は右下肢痛が増悪していましたが、繰り返して伸展してももう影響はありません。
今後の予防についてのエクササイズなどご説明し卒業としました。
冒頭でお話したとおり、「しびれ」と表現される症状には様々な感覚が混じっていると考えられます。
そのように人によって様々である「しびれ」に対しても、あるメカニカルな刺激で症状がどのように変化するのかを細かく確認していくマッケンジー法により評価を進めていく限り、進むべき道を見失うことは無いのです。