3〜4ヶ月前から右肩痛が続いています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右肩痛を主訴に来院された40代女性のお話をご紹介します。
ウォータースポーツを趣味にされている大変アクティブな女性です。3〜4ヶ月前くらいから特にこれといったきっかけもなく、右肩を回している時に痛みを覚えたようです。以後、右腕を思いっきり上げた時に痛みがあるものの、日常生活ではそのような動作をすることがなく支障がないので放置していました。周りの人からは五十肩だのウォータースポーツのしすぎだの言われていて、そんなものかと思っていたようです。
糸島は土地柄サーフィンなどのウォータースポーツを楽しむ方が多いのですが、実は以前肘の痛みがあり当クリニックでマッケンジー法による評価・治療を受けた女性のウォータースポーツ友達で、その友達から勧められ来院しました。
専業主婦で自宅では動き回ることが多いでしょうかと伺うと、そんなことはなく、毎日ウォータースポーツを4〜5時間は楽しんでいるとのこと。趣味を思いっきり楽しんでいる人を見ると、こちらまで嬉しくなりますね!
さて、このようなアクティブな方で、他の情報も含めてレッドフラグなしです。
今現在の症状を確認すると、右腕をぐっと前方から挙げた時と、横からぐっと上まで挙げたときの3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあります。可動域は左右差ありません。
(右肩前方挙上、外転のERP 3点)
姿勢の確認をします。日頃しっかり体を動かしているので姿勢は良いかと思いきや、少し猫背になっています。
姿勢を矯正して保持すること1分……。
さっき痛かったように、手をぐっと挙げてみましょうか
右手をぐっと挙げながら、
少し痛みが軽いような……
(姿勢矯正保持 前方挙上 2.5点 外転 2点)
首の動きも確認します。
概ね良好なのですが、他の動きが良いのに比べ、伸展(上向き)がやや制限されている印象です。
まずは一回しっかりと伸展して、気分が悪くならないことを確認して、さらに4回。お元気な方なので、限界にチャレンジするようにと声をかけながらしっかりと動かしてみます。
するとみるみる伸展の角度が大幅に改善していきました。
もう一度、右手を上げてみて下さい
右手をしっかり挙げながら…、
…だいぶいいです!
(RET+EXT w/op self 5回 エンドレンジを意識してしっかりと 前方挙上 1点、外転 1点)
方向性が見えてきましたので、初回の評価はここまでとして宿題を決めました。
(RET+EXT w/op self 5回/セット、できるだけ)
その翌日。
だいぶ良いようです。
なんと1日10セット以上できたようですが、筋肉痛にはなっていないとのこと。さすが普段から筋肉使っている方は違います。
だいぶよいものの、しっかりと右腕を上げるとまだ多少痛むようです。
エクササイズのチェックをします。
しっかりと顎を引くところから伸展まで上手にできています。体の動かし方についての飲み込みの早さも運動神経の良さと関係があるかも知れませんね。
このように出来る方にはさらに細かく負荷をアップする課題を出してみたくなります。
そこで、顎をしっかり引くところと首をそらしていくところにさらに負荷を高めるためのポイントを説明しながら実演してお見せして、真似して5回やっていただきます。
(RET w/op 左手セルフ→EXT w/op)
さあ、痛いのやってみましょうか
おぉぉ、違う〜〜!
こちらはこちらで動かし方の飲み込みの早さにびっくりです!
もうやるべきことも把握されましたので、宿題はこちらに変更します。
それから4日後、初診から5日後になります。
もう痛みは忘れているそうです。
エクササイズの方は……気持ちが良いので日に10セット以上はやっているそうです!
ご主人から「またやってる!」といわれるそうです。
エクササイズをチェクすると、先日お話した通り、決めるところ、攻めつつさらに反らしていくあたりもポイントをおさえてよく出来ていてビデオ撮影してお手本にしたいくらいです。
エクササイズをこれだけやっていても、もしまた痛くなったらどうします?
また来ます!
そうですね……普通はポイントを思い出してもう一度エクササイズをしてくださいとお話するところですが、あまりに上手にできているので、また痛くなった時は、別のことが起こっている可能性もあるので、その時にはやはりうちに来てくださいね
見たまま教えられたまま自分の運動イメージ通りに体を動かすことが出来るのは一つの才能でしょう。それができない人がむしろ多いのですが、そういった方々には、それなりにまた工夫をしながらエクササイズの指導を行います。
マッケンジー法は一貫したルールに基づく評価・治療システムでありながら、患者さんに合わせたカスタム医療を提供できる柔軟性も兼ね備えています。このカスタム医療を提供できる柔軟性もマッケンジー法の優れた一面と言えます。