case_4 左下肢痛

症状からは坐骨神経痛のようです

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左脚が痛いという30代女性のお話です。

この方は以前私が働いていた病院のオペ室ナースで、いつもとてもアクティブに仕事をこなしている元気の良いナースで、これは私が手術をしていた頃のお話です。

私が執刀する手術がある日のこと、オペ室の廊下を歩いていたときに、脊椎外科の先生となにやらお話し中。
痛み止めを何を使うかなど話しているので、話している所に、ちょっとおせっかいかなとも思ったのですが、「どうかしたの?」と割り込みました。

聞くと、急に左下肢痛がひどくなり、どうしたものかと相談中。とりあえず、痛み止めをつかって、良くならなければMRI検査をしてみることなど治療方針を話していました。

とにかく左下肢痛が強く、今日はいよいよ感覚もおかしくなり左足を引きずるような歩き方で転びそうになったりしている様子。症状からはいわゆる坐骨神経痛ですね。
よく聞いてみると、5年ほど前から軽い左殿部痛はよく自覚していたとのこと。

評価表は手元に無いのですが、日常どんな業務をこなしているかだいたい知っているので、レッドフラグが無いことを確認してさっそく姿勢チェック、姿勢矯正保持してみると、少しだけ良くなっている事が自覚されます。

立位での屈曲(前かがみ)や伸展(腰をそらす)などの動きをチェック。屈曲では痛みが増悪する事を確認できました。
そのまま立位での伸展エクササイズを数回。さほど変化無し。
オペ室なのでたまたま使っていない手術台を廊下に発見。
人の往来のあるなかですが、プライバシー保護もなしなのですが……本人が良いというのでとりあえず評価を続行します。

さっそく腹臥位(うつ伏せ)になってもらいベースラインをチェック。
左下肢痛はあまり変化無しです。

腰椎の伸展を数回……すると、今度は左大腿あたりに痛みが動いてきています。このあたりのプロセスはマッケンジー法の細かいことになりますので省略しますが、ベースラインからの変化は青信号と判断できる状態なので、さらに評価を続けます。繰り返すうちに症状が軽くなってきました。

手術台から降りるときの降り方を指導して立ってもらうと……だいぶ立ちやすくなってます。

さらにナース・ステーションにある腰の高さで当り具合が丁度良いデスクを発見。
そこで立位の伸展エクササイズを指導。
症状を注意深くモニタリングしながらエンドレンジまで思いっきり5回ほどやってもらうと……痛みは無くなり歩けるようになりました!

今回のように反応が良いと、すっかり良くなったと勘違いしてエクササイズをサボる可能性があるので、現在症状が良くなってることは決して十分に治っているわけではない事をよく説明し、自宅と職場での座位姿勢など注意店とエクササイズ指導を行い初回のセッション終了です。

翌日、電話でフォロー、手術中でつながらず、夕方になって丸一日通常の業務をこなした後の本人から電話が。

もう全く痛くなくなり、普通に歩けていますとのこと。

さらに5年来の左殿部痛も消失しているようです。

これからが大切だと言う事を再度お話しして2回目の指導終了。

あの日、廊下で左脚の痛みについて相談している場を通りかかったのは偶然では無かったように感じるのは私だけでしょうか。

もちろん、左下肢痛でお悩みの全ての方が同じように治るわけではないのですが、今回のような経過をたどることも稀ではありません。
このスピード感もまたマッケンジー法がパワフルだと感じる理由なのです。