肘が痛くて、軽いレバーですら右手で引けません
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右肘痛を主訴に来院された70代女性のお話です。
これまで当クリニックの症例ファイルをご覧いただいている皆さんにはもう腰だけでなく、首、肩、肘、股、膝、足など四肢のどこが痛くてもマッケンジー法での評価を行うことはもう当たり前になったかと思います。
2日前に、歯磨きをして、その後、美顔ローラーなど使っていて右前腕のしびれ感を自覚されました。昨日から右手の力が入りにくい感じもあります。軽いレバーですら右手で引くことが出来ません。
とにかく痛くて右肘を90°曲げるのがやっとで、痛みの程度は8点（考えうる最大の痛みが10点満点として）はあるようです。
痛みの部位は比較的限局していて右前腕内側近位部、上腕骨内側上顆の遠位数センチくらいの部位に強い圧痛を認めます。
姿勢は悪く、姿勢矯正保持をしてみましたが、あまりはっきりとした変化はありません。
頚椎の単純Ｘ線検査では年齢相応の変性は認めますが、メカニカルな評価は問題なさそうです。
途中を割愛しますが、初日は頚椎の伸展まで行い可動域は若干改善し、屈曲は110°くらいまでできるようになりましたが、疼痛の程度は変わりませんでした。
（RET＋EXT 5回☓3回 ROM↑ 肘の屈曲角度増大）
はっきりした変化は得られていませんが、現時点では少なくとも悪い兆候は何もないので、良くも悪くもまずはしっかりと続けてみる価値ありと判断して伸展エクササイズを宿題にします。
(RET＋EXT w/op self 5回/セット。5〜6回/日)
さて、その翌日。
ニコニコ顔で診察室に入ってこられました。
それもそのはず、だいぶよいとのこと。
もうレバーも普通に使えるようになったんです
昨日の診察について、肘が痛くて注射をしてもらえるか、痛み止めでももらえるかと思って来たのに、それがしてもらえなかったのが実は少々期待はずれだったと打ち明けられました。
痛いのは肘なのに首の体操でいいのかしら……という疑問を持ちつつも、大変真面目で熱心な方でしっかりとエクササイズを実施したようです。
帰ってからエクササイズをさっそく実施し、3セット目くらいに、あれっ、という感じで良くなってきたのを自覚しました。これはいいかも……と思ってさらに熱心に6〜7セットは出来たようです。
エクササイズをチェックして、少しだけ修正しましたが、これだけエクササイズが出来ていた70代の女性にお会いしたのは初めてかもしれません。
これは何が悪かったんですか？
何が悪かったと思いますか？
筋肉かしら……、骨と思ってたけど…
今回症状が良くなるまでに右肘をもんだりしてませんよね。何をしました？
？
首の運動だけで良くなったのだから、右肘の骨とか、筋肉とかの問題ではなさそうですね！
昨日は注射くらいしてくれないのかと思ってましたが、ほんとによかったです！
そして初診から4日後。
症状は全くなくなったようです。
後傾部のコリ感はあるようで、これは時々経験されるしっかりエクササイズを出来ている証拠とも言える筋肉痛のような状態です。
姿勢もかなり意識していて、エクササイズは気づいたらやるようになり、すでにかなり癖になっていて、一日に10回くらいはやっているそうです。
エクササイズを再度チェックしたところ、とても上手です。
と、ここで新たなご相談をうけました。右肘の痛みで忘れていたという数年来あった右上腕部の痛みが戻ってきた感じがするとのこと。
まだ断定は出来ませんが、同側のより近位部の痛み……何か関連がありそうに思うのは私だけではないと思います。
引き続き右上腕痛も評価していきます。
どこを？……もちろん頚椎ですね！