水泳の時間に平泳ぎをしていて右股関節が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
夏真っ盛り、プールシーズンですね。というわけで、今日は水泳の時間に右股関節前方が痛くなったという11歳女児のお話です。
朝、学校の水泳の時間に平泳ぎをしていて右股関節が痛くなりました。その後、階段などで急に痛くなったりするようですが、平地歩行は全く痛くありません。
階段で悪くなるという情報がありましたので、足台を使って症状が再現されるか確認してみます。
右足に体重を載せた状態で左足を台の上に上げる動作で2点の弱い疼痛が再現できますが、もう少しはっきりしたベースラインが欲しいところ。あれこれとやってみたところ、立位で左足を前にして右股関節伸展させる動作、つまりフロントランジのような運動で5点の痛みがありましたので、これをベースラインとして評価します。
右股関節の痛みですが、評価は…もちろん、腰椎からでしたね!
立位での可動域を確認すると伸展で右股関節前方痛が出ますが、戻ると元通りです。
(EIS 右股関節痛 2-3点 P-NW)
屈曲や側方の動きでは特に症状は誘発されません。
さて、平泳ぎの最中にどんな格好をしているのか、どんな運動になっているのかをイメージしながら動かすべき方向を考えます。あまり泳ぎは得意ではないようですが、平泳ぎでは腰椎はどちらかというと伸展しているでしょうか…。
まずは屈曲方向を先に評価してみることにしました。
まずは仰向けになってしっかりと持続で屈曲の負荷をかけてみます。
1分ほど続けた後に先程のベースラインをチェックしましたが、変化はありません。
(FIL持続 NE)
今度は座って自分でしっかりと負荷をかけてもらいながら持続の屈曲を試しますが、これまた変化なし。
(FISitting 10回 NE)
早めに股関節の評価をしてみたほうが良いかな…と股関節の評価を開始。
ここは後で振り返ると余計な評価でしたので、割愛しますが、評価の最中、部活のときに股関節を外旋外転して前屈し股関節をストレッチをする話を聞き出せました。
あっ…皆さんももうお気づきでしょうか。
腰椎の評価を終わっていませんでしたね!
腰椎の評価に戻ります。
臥位で腰椎の伸展を開始。途中、右股関節の2点程度の疼痛がありましたが、増悪はないのでそのまま続け、10回終わってベースラインを確認すると4点と僅かですが評価開始して初めて変化があります。
体が柔らかいので負荷をグーンと上げてさらに伸展を続けます。もっとグーンと体をそらして〜と応援しますw
そして10回終わって、再びベースラインをチェックします。
痛みはどうかな…?
大丈夫です
大丈夫?…って痛みは?
痛くありません
(EIL w/sag エンドレンジを意識して 10回 abolish B)
やっと出ました…。
自宅でのエクササイズなど説明して初回評価を終了します。
翌日にフォローアップした時点ではまだ少し症状が残っていましたのでさらに注意点など説明し数日で完治にいたり、現在は部活に励んでいます。
さて、痛みは右股関節の前方でしたが、結果、腰椎の伸展エクササイズで改善しました。
今回の評価内容を振り返ってみると、意識しているはずの評価の手順が時としてぶれている事を痛感します。
いつもマッケンジー法の講習会で講師の先生から何度も聞いている、「やりきる」という言葉。
腰の評価をやりきっていたのか…ここが今回のポイントだったことは言うまでもありません。
このポイントを忘れずにいたら、もう少し近道を行くことができたかもしれませんね。しかし最終的にはゴールにはたどりつけました。遠回りになったとしても、いずれたどり着くべきところにたどり着くことができるのがマッケンジー法の優れたところだとも言えます。