case_318 両大腿痛

半年以上続く両大腿の痛みと右肩の痛みもあります

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両大腿痛のある50代女性のお話です。

管理職でほとんどデスクワークの毎日です。半年以上前くらいでしょうか、あまりはっきりとは覚えていませんが座っていて立ち上がる時に両大腿の痛みを覚えるようになりました。それから1ヶ月ほどでさらに痛みが強くなり、近くのクリニックにかかりましたが、異常はないと言われました。その後も座っているとふくらはぎまで痛い感じがすることもあり、座っているとお尻の当たるところが痛くて座り変えるなどの毎日。他の整形外科に行って診察を受けましたが、やはり異常はなく、週に1回程度のマッサージなどの治療を受けても変わりません。症状が続くため他のスポーツ整形外科の看板のある病院にもかかってみましたが、やはり異常はないという診断で、そちらでもマッサージなどリハビリを受けましたが症状は全く変わりませんでした。
寝返りする時にも痛みで目が覚めるようです。
最後に行った整形外科で、神経の病気かもしれないと言われ、神経内科受診をすすめられ、受診したところ、そちらから当院を紹介されました。

他に、若い頃から右肩凝りのような症状があり、右手を前方に伸ばす時に右肩に痛みが走ります。

手芸が趣味で、長座で長い時間座りっぱなしのことも多いようです。

特にしびれ感はないのですが、しゃがんだり踏ん張ったりする動作がしづらく感じています。特に朝の症状が強いようです。

現在の症状を確認します。立ち上がる時に両大腿痛が5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、右肩の前方挙上の疼痛2点があり、これらをベースラインとしました。

腰椎の可動域をチェックすると、いずれも中等度制限程度ですが、特に伸展はしづらそうに見えます。

まずは姿勢を矯正して保持してみました。すると、右肩を動かす時に感じる痛みがでて、臀部の痛みが少し強くなるようです。

座位での姿勢矯正では少々症状が強くなるようにも見えますが、日常生活のパターンと腰椎の可動域検査の結果を参考に、まずはうつ伏せで腰椎の伸展をしてみることにしました。

まずはうつ伏せ気になっていただき、その状態での症状を確認します。

佛坂
佛坂

いま、痛みはどうですか?

A子さん
A子さん

今はなんともありません

うつ伏せでの腰椎の伸展のやり方をご説明しまずは1回。少々やりにくそうですが、特に症状がないことを確認しつつ、10回続けてからもう一度椅子に座っていただきます。

佛坂
佛坂

さっきと同じように立ち上がってみましょうか

A子さん
A子さん

あっ…すっと立てました!

(EIL 10回 B)

少し負荷を強めるやり方をご説明しながらさらに10回繰り返します。

佛坂
佛坂

もう一度立ち上がってみましょう

A子さん
A子さん

なんともないです!ちゃんと踏ん張れました

もうひとつ、念の為、最初に確認した右肩の症状も確認します。

佛坂
佛坂

右肩の痛みはどうでしょう?

さっと、右腕を前に伸ばしながら

A子さん
A子さん

あれっ…大丈夫です!

上肢と下肢の症状を同時に持っている患者さんは珍しくありません。もちろんそれぞれの症状のある部位についてそれぞれの治療を始めるという一般的な考え方もあるかとは思いますが、マッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)で評価する場合、どの症状が一番気になるかをお伺いして、その症状をターゲットに評価をすすめます。すると、今回のお話のようにターゲットではなかった症状も同時に改善することも稀ではありません。
患者さんの訴えが複数あっても、やるべきことをできる限りシンプルにするという考え方もMDTの洗練された考え方だと言えます。