庭の重労働の後に右肩が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は、庭の重労働の後に右肩が痛くなったという70代女性のお話しです。
若い頃からお仕事でも比較的重労働をされていたようで、体を動かすのには慣れています。園芸も本格的でトラクターを使って耕す作業が必要なほど。数日前にその作業の後、後片付けなどかなり重労働が重なったようです。その翌日、少し右肩に違和感を覚えて徐々に痛くなり、その後、右首筋、右頭にまで痛みが広がってきたので、何か悪い病気ではないかと心配になり来院しました。
頭痛には様々な重篤な病態の可能性がありますので、マッケンジー法でもより注意して問診を行いますが、お話を詳しく伺い、急性の出血など頭蓋内病変を思わせるような頭痛の起こり方ではないことが確認できました。
お話を伺っている時の座っている姿勢はやや猫背で頭が多少前に出ているようにみえます。
単純X線検査では年齢相応の変性所見とストレートネックが確認できました。
どうやら頭の問題ではないようだということをお話ししたのちに、まずは現在の症状を確認します。

今現在の痛みはどんな感じでしょうか?

今は…なんともないです。なんかお話を聞いてもらって悪い病気じゃなさそうだと分かったら安心したからですかね…
病は気からといいますが、気分が楽になるだけで痛みを感じる一つの原因になっていた緊張がとけるのでしょうか。お話しているうちに症状が改善する人もたまにいらっしゃいます。

右肩を動かすときの痛みはどうでしょう?

こうやって物を持ち上げる時が痛いですね…
前方で物を持ち上げるような動作が痛いようですが、今は物を持たずに右肩を屈曲30°で内旋する動作だけで7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが確認できました。
先ほど確認できていた姿勢の悪さをまずは矯正して保持してみます。

さっきの手を前に上げて痛かったのをやってみましょうか

……さっきより、痛くないです
多少いい印象ですから、そのまましっかりと頚椎・胸椎を動かす動かし方をご説明して10回。

もう一度手を挙げてみましょうか

あっ、あがる!

痛みは何点くらい?

痛みは…痛くないかも
(SOC abolish B)
まだ違和感くらいはあるようですが、先ほどの響く痛みはなくなりました。
エクササイズのやり方についてご説明し、初回評価を終了しました。
重労働の後に痛くなった右肩でしたが、肩に介入する前に症状は改善してしまいました。
70代の重労働の後の右肩痛だと、腱板断裂を疑われMRI撮像されることも多いのではないでしょうか。
もちろん検査してはいけないわけではないのですが、70代でしたら無症状の肩関節であってもMRIで変性や断裂などがみられることは比較的多いですし、高齢の方では胸部単純X線検査で同時に写っている無症状の肩関節に変形が見つかることもあります。ということは今回のような脊椎に関連した肩の痛みであっても、撮影した肩の単純X線検査で変形があったり、MRIで断裂がみつかったりすることがありえますね。すると、画像所見を診断根拠にしがちな整形外科の診療現場では肩の痛みは肩の問題として処理されることが多いということは容易に想像できますね。
単純X線検査で変形性関節症と言われたことがある、あるいはMRIで腱板断裂があると言われたことがあっても、その肩の痛みはひょっとしたら肩の問題ではないかもしれないのです。