case_292 左膝痛・両示指痛

左膝裏の痛みに加えて人差し指の痛みもあるようです

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左膝の痛みで来院した60代女性のお話です。

2ヶ月くらい前の朝、布団から立ち上がる時に左膝窩部に痛みを覚えました。それ以来、同様に立ち上がる時に痛くて膝が伸ばしにくい感じが続いているため来院しました。

A子さん
A子さん

最近、あちこち悪くて、老化に抗っているんですよ…

佛坂
佛坂

他にどこか調子悪いんですか?

A子さん
A子さん

指もこんなに変形してて、物が当たっただけでも痛い感じで、お箸も痛くて持ち替えないといけない時もあるんです

見ると両示指DIP関節のヘバーデン結節があるのがわかります。ヘバーデン結節があっても痛くない人がいることはこれまでにも症例ファイルでご紹介したことがあります。

今日は膝の症状がメインではありますが、一応症状はチェックしておきます。

今はグーパーでは痛みはないようですが、両示指DIP関節の部位を反対側の指で押したら2点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあるようです。左膝窩部は座位のまま自分で膝を伸展するときに膝窩部の外側に3点の痛みが再現できました。

まず姿勢を1分ほど矯正して保持してみましたが、左膝の痛みはあまり変わりないようです。指の痛みも明らかな変化はありません。

立ち上がる時に痛みがあって、歩いていると少しいいという情報も参考に、まずは座ったままで腰椎の伸展を10回繰り返してみます。

佛坂
佛坂

膝伸ばしてみましょう

先ほどと同じように座ったままでの左膝をしっかりと伸ばしてもらいます。

A子さん
A子さん

さっきより少し伸ばしやすいような…

まだはっきりとしませんので、さらに10回、座ったままでの下位頚椎から胸腰椎伸展をくりかえしてからもう一度伺います。

A子さん
A子さん

まだ痛いけど、さっきよりだいぶ伸ばしやすいです!

先ほどよりしっかりと左膝を伸ばし切っているのがわかります。

佛坂
佛坂

さっきの指の痛かったところもう一回押してみましょうか

先ほどの痛かったところを探しながら

A子さん
A子さん

痛くないです…なんか暗示にかかってるみたい

(SOC 10回×2セット とくにRET意識して B 左膝痛↓ROM↑、両示指DIP痛 abolish)

しばらく今後のエクササイズのやりかたなどご説明していると、自分でまた指の痛みを再度確認するように触りながら

A子さん
A子さん

やっぱり痛くないですね…なんか魔法みたい

佛坂
佛坂

よく魔法みたいって言われるんですよ。でも、一緒にやったことはしっかりと背骨を動かすことだけで症状が改善したんですから、何が悪いかわかりましたね!

今回は左膝の症状の相談のために来院された方でしたが、たまたま両示指のヘバーデン結節のところが痛いという症状も事前に聞き出せましたので、これについてもベースラインとして評価を行いました。

その結果、下位頚椎から腰椎にかけての脊椎への反復運動介入(座位での伸展反復)を行い膝の症状が改善したと同時に両示指の痛みも消えてしまいました。

ちょっと狐につままれたようなお話で、そう簡単には信じられませんよね。

私自身、整形外科医の立場で単純エックス線写真(今回はヘバーデン結節の特徴的な外見の変形から診断しています)での変形した関節部位に痛みがあると、その局所の治療をしていた時期があります。マッケンジー法による評価を自ら実践するようになり間もない頃、今回のような思いもかけず症状が改善する症例を目の当たりにした時に、私の方から患者さんに「本当に痛み取れたんですか???」と驚きながらお聞きしていたこともあります。

様々な四肢の痛みが脊椎に対する介入で改善するということはすでに多施設研究でも報告されていることはこれまでにもご紹介したことがあります※。

手の痛みで手の治療、膝の痛みで膝の治療を受けているけど、あまり症状が改善しないと感じておられる方の中には、ひょっとしたら今回のお話でご紹介したような脊椎に関連した症状が紛れ込んでいるかもしれません。

皆様のご参考になれば幸いです。


※四肢のみに痛みがある患者の中に、多くの脊椎に関連した痛みがあることを報告した多施設研究です。論文のNCBIリンクより無料で全文をご覧いただけます。
Rosedale R, et al. A study exploring the prevalence of Extremity Pain of Spinal Source (EXPOSS). J Man Manip Ther. 2020;28:222-230.