半年ほど前から続く右肩痛
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右肩の痛みで来院された80代男性のお話です。
半年ほど前から右肩の張った感じがあり4ヶ月前から症状が強くなりました。近くの整形外科医院で注射の治療を2回うけましたが効果がありませんでした。整骨院では2番目の頚椎が少しずれているので、それを入れるという説明をうけて7回ほど通ったのですが何も変わらず治療はやめてしまいました。2ヶ月前から右肩の痛みがさらに強くなり、かかりつけの内科を受診したところ、帯状疱疹との診断で治療を受けて皮疹は良くなったのですが、右肩の症状は変わらず当院へ紹介となりました。帯状疱疹後、右上腕に痒みの様な症状を残していますが薬を使うほどではないようです。
他に、この1ヶ月ほど両母指の付け根が痛い感じあり。ものを持つ時の持ち方や、キャップを開ける様な動作で痛みがあるようです。
現在の状態は右肩から右上腕にかけての熱いような痛み7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、両母指MP掌側の押した時の痛みは5点です。
頚椎ROMを確認すると、伸展が重度に制限制限され、右上腕に7点の痛みが走ります。
側屈は両側で重度制限、回旋は両側中等度制限ですが、痛みの増悪はありません。
座位での姿勢は少し猫背です。
まずはできる範囲で姿勢を整えて1分ほど。
あまり変化は感じられません。
(姿勢矯正保持 NE)
続いてさらにしっかりと下位頚椎から胸椎の伸展を繰り返してみます。

右腕の痛みはどうです?

さっきまでの熱いような感じが少し軽くなりました

親指の付け根の痛みはどうです?
自分で何度か左右の母指の付け根を押しながら、

さっきより痛くないですね…

さっきは5点でしたが、今は何点です?

3点かな
(SOC B 頚部痛 5点 両母指圧痛 3点)
ご高齢でもありますので、このエクササイズのやり方を再度ご説明しホームワークにしました。
それから1週間後。

数日は少しいいかなと思って、右肩も動かすことをやっていたら、その翌日から痛くなったんですよ
ホームワークのエクササイズをどのようにやっておられたのかチェックします。
しっかりと顎を引くところがうまくできていないことが分かりましたので、ポイントなどをご説明ししっかりと反復してみます。
やはり右肩と両母指つけねの症状が改善することが確認できました。
(SOC ER意識して B 右肩痛、両母指痛軽減)
それから 11日後。
前回のやり方修正後、頑張ってやってみたそうです。

この前来た時から体操頑張って2日目には右手首の腱鞘炎は治ってしまったんです!
初回に症状の聞き漏らしがあった様で、実は右手関節の橈側の痛みが以前からあったとのことで、その痛みがすっかり良くなったということを先に報告されました。
また、一番気になっていた首の右側の痛みがほぼなくなり、かなり楽になったようです。
今残っている症状は、右上腕の重い感じと右肩外転したときの右肩に響く痛みが少しあるくらいになっています。両母指の付け根の痛みも少し残っています。
エクササイズのやり方をチェックします。
顎がどうしても引きにくい感じなので、ポイントなどをご説明します。
頭を固定して胸を出していく感じで反復してみます。

右肩どうです?

少しいいかな…
(SOC B?)
さらに顎を両手で支えながら胸を前に出すようなやり方で顎をしっかりと後ろに引くことを繰り返してみます。

もう一回右肩動かしてみましょうか

おお、だいぶいいですね、痛いのが半分くらいになりました
母指の付け根の痛みもだいぶ減ります。
(RET w/op self B 右肩痛半減、両母指痛5→3点)
やるべきことははっきりとしてきましたので、次回の予約はどうするかお尋ねしたところ、しばらく自分でやってみるとのことで、少し早いのですが卒業としました。
まだ症状残っているのに卒業?
そう思った方も多いのではないでしょうか。
卒業のタイミングについての考え方は患者さんによっても違いますし、このあたりの考え方は同じマッケンジー法による評価・治療を実践している認定資格者間でも異なるかもしれません。
マッケンジー法では、患者の自己管理に向けて教育を行い自立を支援していきます。ですから、症状改善のための道のりが見えている方で「自分でやってみます」と宣言している人については、卒業されることになんら問題ないと思いませんか?
これは私個人の考えかもしれませんが、もし患者さんがお約束のエクササイズを自分なりに頑張った後に、症状の改善が頭打ちになり、自分でどうしたら良いのかわからない時、またその方のお役に立てる時が来ると考えています。