何年も前から続く腰痛、脊椎側彎もあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は何年も前から続いているという腰痛で来院した80代女性のお話です。
何年も前からといっても、痛む場所が同じというわけでなく、右だったり、左だったりします。とくに立ち上がる時に痛くて腰が伸ばせない感じがします。また、他の症状も含めてお話を伺っていたところ、だいぶ前から右肩も動かし方によって痛くて、お近くの整形外科で診てもらったところ、右肩の筋が一本切れていると言われたことがあります。今も右肩を前方に挙上する時に痛みがあります。
右膝は人工関節の手術後で、左膝は鏡視下処置を受けたことがあります。
今回の来院の主な目的は腰痛の改善ですが、右肩の症状も診ないわけではありません。

一番気になるところに集中して体操をしているうちに他の症状も良くなることはよくあるので、まずは腰の症状に集中してみましょう
複数箇所の症状で受診される方にはいつもおおよそ同様のご説明をして評価をすすめます。
念のため腰椎の単純X線検査も確認しました。変性とそれに伴う側弯を認めますが、運動が問題となるような病変はないようです。
現在は右肩には前方挙上での軽い痛みと、腰には椅子から立ち上がる時に腰の右側に軽い痛みがあるくらいです。
まずは座ったままで背骨をしっかり動かす動かし方をご説明して5回、問題ないことを確認してさらに5回やってから先ほどと同じように立ち上がってもらいます。

今、痛みどうでした?

今は痛くなかったです
また座ってもらい、右手を前方から上げてもらい右肩の痛みも確認します。

あれっ、痛くない
先ほど確認した右肩の痛みはなくなったようです。
(SOC B abolish 腰痛・右肩痛)
それから2週間後。
5割くらいよくなったようです。
エクササイズをどのようにやっていたのか確認してみると、姿勢を整えて維持するようなやり方に変わっています。
先日一緒にやったやり方で重要なポイントがなんだったのかを再度確認します。

何がポイントだったか覚えてます?マーカーで囲んでいたところです

あれっ…なんでしたっけ…?
多くの方がこのポイントが抜けがちなので、毎回必ずマーカーで囲う文字があります。

『できるだけ』でしたね!
もういちど実際に体を動かしながら、できるだけというのはどんな動かし方をするのかを一緒にやって確認します。
今回はこの「できるだけ」というところにポイントを絞ってご説明しました。
それから2週間後。初診から1ヶ月になります。

だいぶよくなりました!
長く流しに立っていると少し痛いかなというくらいで、以前のような立ち上がる時に腰が伸びないようなこともなくなったようです。

それと、布団を叩いたりする時に以前は右肩が痛かったのも良くなったんです!
肩の痛みも同時に解決してしまったようです。
今後もエクササイズを続けることの大切さをご説明し、卒業としました。
80代女性の何年も続いている腰痛がエクササイズで1ヶ月ほどでほぼ解消したお話、いかがでしたか。
「歳のせいだから治らない」という言葉を時に耳にしますね。もちろん加齢による身体の変化に起因する腰痛もあると思いますが、高齢者の腰痛であっても「歳のせい」ではないことも少なくないのです。
歳のせいだからと思い込んでいる方で、まだマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)での評価を受けたことがない方はお近くの国際マッケンジー協会認定セラピストの在籍する施設で一度は診てもらうことをお勧めいたします。