case_282 両足底痛

半年ほど前から続く腰痛と両足の痛み

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は腰痛と両足の痛みで受診した80代男性のお話です。

リウマチ性多発筋痛症という病気のためでステロイドを内服している方です、これについては内服薬でうまくコントロールできているようです。現在も1日5〜6時間は漬物工場で作業するという現役バリバリの働きぶりです。

半年ほど前から腰痛と両足に痛みを覚えるようになりました。3週間ほど前から症状が強くなり両足がつけないほどに痛むようになったため来院しました。歩く時はとても痛いのですが、座っている時にはなんともないようです。

まずは診察室での現在の症状を確認します。
お話を伺いながら、まずは座ったままでの足踏みをしていただくと2点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあることが確認できました。

続いて立っていただき足踏みしてもらいます。

佛坂
佛坂

足をついた時の痛みはどうです?

B男さん
B男さん

今は2点くらいですね…

今は比較的症状が軽い状態のようで、座って足をつくときとあまりかわりません。

やや座り姿勢は猫背です。姿勢を矯正してしばらくすると、

B男さん
B男さん

内股のあたりが少し熱いような感じがします…

嫌な感じはないようですので、1分ほど続けます。

佛坂
佛坂

もう一回立って足踏みしてみましょうか

B男さん
B男さん

さっきより痛くないような気がします

(姿勢矯正保持 B?)

いい印象なので、そのまま座位でしっかりと伸展を繰り返す動きを10回続けてみます。

佛坂
佛坂

もう一回立って足踏みしてみましょうか

B男さん
B男さん

今は痛くないです!

(SOC 10回 abolish B)

エクササイズのやり方や注意点などについてご説明して初回評価を終了しました。

それから1週間後。

エクササイズはけっこう頑張れて、1日15セットくらいできています。

今はもう痛みというほどの痛みはなく、歩く時の両足底の違和感を感じるくらいです。

右膝の内側の痛みもあったようですが、それも多少良くなったように感じています。

足踏みすると、右膝内側に多少響く痛みが確認できました。

エクササイズチェックをチェックしてみます。

腰を伸ばしてそのまま保持するようなやり方です。

佛坂
佛坂

一緒にやったやり方、こんな感じでしたっけ?

足踏みでの右膝内側の症状はあまり変わらないようです。

やり方については個別にご説明した内容をプリントして差し上げていますが、時に自分なりの解釈でやり方が変わっていることもあります。症状は以前より改善していると受け取れる状態でしたので、そのままご本人のやり方で続けるのもありなのですが、さらにしっかりと動かす動かし方をやって効果を確認してみます。

佛坂
佛坂

もう一度足踏みしてみましょうか

B男さん
B男さん

あっ、あんまり痛くない感じですね

(SOC ER意識 10回 B)

足踏みの右膝の痛み軽減が確認できたので、やはりしっかりと動かすところを意識したやり方を再度確認して2回目の評価を終わりました。

それから1週間後、初診から2週間になります。

B男さん
B男さん

あれから足の裏は全然痛くないです

右膝の内側には少し違和感がある程度で痛みはありません。

椅子から立ち上がってもらうと、膝窩部の突っ張る感じがあり、これをBLにしてエクササイズチェックを行います。

座位でしっかり胸椎から腰椎を伸展したところでさらにもう少しという感じの粘りをいれて6回。

佛坂
佛坂

さっき、立った時の膝の感覚覚えてますよね?もう一度立って比べてみましょうか

B男さん
B男さん

だいぶいいです!

(SOC ER意識 6回 B)

これからもエクササイズを続けていただくことの大切さをご説明し、卒業としました。

今回は両足底痛という、少し珍しいタイプの痛みでしたが、脊椎への介入で症状は短期間で良くなってしまいました。
腰椎に関連した足の痛みだったと結論して良いように思います。

エクササイズのやり方についてその方の評価に基づいた完全カスタムのエクササイズ法をプリントして差し上げています。
それでもいつの間にか自己流になっている人も少なくありません。

しかし必ずしも自己流が悪いわけではありません。こちらの意図しない体操を続けて症状が良くなることだってあり得ます。
ですから、経過についてお伺いする時には、症状の変化に加えて、必ずホームエクササイズをどのように実施されていたのかを確認します。実際に目の前でどのようにエクササイズをやっていたのかを見せていただき、症状が改善している場合は多少意図したやり方ではない場合であっても許容することもありますし、改善が得られていない場合はエクササイズのやり方に変更すべき点があれば微調整や修正を加えるなど、人それぞれにアドバイスを行います。

人それぞれに違う体で違う症状なのですから、一律に腰痛ならこの体操、脊柱管狭窄症ならこの体操という単純な決め方ができるはずはありませんね。

マッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)は各々の状態に合わせて症状が改善できる方法を考える完全カスタム型の医療システムなのです。