リハビリに行った後の2時間くらい痛みが強くなります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左下肢痛のある40代女性のお話しです。
一日中座っていることが多い事務職です。3ヶ月ほど前に、長く座っているときなど左臀部から大腿にかけて少し違和感を覚えるようになり、その後、時に左下腿あたりまで痛くなることがでてきました。先月にはさらに痛みが強くなり、近くのリハビリのできる整形外科にかかったところ、坐骨神経痛と言われ、施術を受けました。前屈が硬いと言われ、ストレッチと下肢のマッサージなど受けたのですが、リハビリが終わって2時間ほどはむしろ痛みが強く、その後、元と同じレベルにもどったものの、1週間後に再び施術を受けるとやはり痛みが強くなる時間があり、その後も2回、リハビリに通うたびに悪くなるため、別件で内科にかかった際に相談したところ、当院をすすめられ来院しました。
座っている時に意識することが多く、立っている時や歩いている時にはあまり気にならないことが多いようです。日によって症状がかわるようで、初診当日は比較的よいようです。座ってお話ししていると、少しだけ左膝裏あたりに突っ張り感のような違和感がある程度です。まずは姿勢を整えて1分ほど保持してみます。
さきほどあった左膝の後ろの突っ張り感はどんな感じですか?
そうですね…今は無いかも…
姿勢を変えただけで症状が変わることを体験できたようです。
立ち上がり動作、立ったままの状態での症状はありません。
腰椎の可動域をみると、屈曲(前屈)がやや硬く、指先は床から10cm以上はなれています。
痛みはどうです?
ふくらはぎが突っ張ったような感じですね…
いつもの左下肢痛ではないのですが、両下腿の張ったような痛みが強いようです。
他の動きも中等度に制限されています。立ったままでの腰椎の伸展は少しきついようなので、うつ伏せになっていただきます。
うつ伏せでの腰椎の伸展のやり方をご説明してからやってもらいます。
まずは一回。
少し腰が痛いですね…
いつも痛い臀部から下肢の痛みではなく腰のあたりに痛みが多少あるようです。
足には症状がなく、続けても大丈夫そうなので続けます。
様子を伺いながらトータル10回。
最後の1回はどうでした?
なんともなかったです、すごく上がるようになりました
最初は体を持ち上げるのが大変そうでしたが、最後はより高く上がっても大丈夫だったようです。
再び立っていただき、腰椎の可動域をチェックします
前に曲げた時にふくらはぎが痛かったの覚えてます?また前屈してその痛みがどんな感じか確認してもらえますか?
ゆっくりと前屈してもらいます。
軽くなりました!まだ少し張った感じはありますが、だいぶしやすいです
座った時の左膝の違和感ももうありません。
ご自分で取り組んでいただくエクササイズについてご説明し、初回評価を終了しました。
ご紹介した症状は左坐骨神経痛の症状だったと思われますが、適切と思われる方向に動かすことで速やかに症状は消失しました。
もちろんまだ治ったわけではありません。しかしどういうエクササイズをしていけば良いのかという方向性は見えたように思えます。日常生活のなかで繰り返し行われる姿勢・運動負荷により発症する様々な症状は、その症状がどのような時に良くなるのか、あるいは悪くなるのかをお伺いすると、その中に症状改善のヒントが見えてくることは少なくないのです。