数年前から痛み止めを常用しています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左膝の痛みがある60代女性のお話です。
もう何年も前からレストランホールのお仕事をしていて一日10時間ほどの立ち仕事をこなしています。昼間の働き疲れもあってか、家に帰るとゴロゴロしてばかりの生活をしていて運動不足は自覚しています。
数年前に、特に捻ったわけでもなく左踵に激痛がはしり、近くの整形外科にかかり、痛み止めなどもらっていたのですが、痛み止めはあまり効きませんでした。そのうち今度は左膝の内側が痛くなり、左膝が痛くなった頃には左踵の痛みが軽くなったことを覚えているそうです。
左膝の痛みはその後ずっと続いていて、痛み止めを長期間にわたり投薬されているのですが、痛み止めをこんなに飲み続けていいのかと血圧・コレステロールでかかっている内科の先生に相談したところ、血液検査で臓器の問題が起こってきているのでやめましょうとしばらく薬をやめたところ、やはり少し痛みが強くなってしまったようです。
画像検査ではたいした異常もなく、内科の先生からマッケンジー法による評価をすすめられて受診しました。
お話を伺いながら座って話している間も、時に左膝にズンズンする感じがあるようです。左膝の内側は押すのはもちろん、触るだけでも痛い感じがあるようです。
最近では腰の両側の痛みもあり、臀部の凝ったような感じも加わりました。痛みが強い時には歩く時には左膝の内側に10点くらいの痛みがありますが、現在は足踏みで7点くらいの痛みが再現できることを確認しました。
まずは姿勢を矯正して1分ほど様子を見てから伺います。
先ほどのズンズンする感じ、今はどうです?
少し軽くなったような感じです
(姿勢矯正保持 B 左膝の疼痛軽減)
腰椎の動きを確認すると、伸展するときに腰痛はありますが左膝痛は全く感じないようです。
診察台にうつ伏せになって肘をついた姿勢をとってもらいます。
腰が少し痛いです
我慢できる程度のようなので、しばらくそのままの状態を続けていると、徐々に痛みは軽くなっていき、1分ほどのうちに痛くない状態になりました。
そのまま試しに両手で上半身を起こす、そう、マッケンジー法で一番知られている腹臥位での腰椎伸展をやってみることにしました。
まずは数回、問題ないことを確認し、さらに深くしっかりとトータルで10回。
膝をついただけでも痛かったんですが、今はこうやって膝があたってても痛くないです
触るだけでも痛かった左膝が診察台に触っているところが今は痛くないようです。
立ってみましょうか
診察台から起き上がって座位になった時に
あっ、今少し左膝にピリッときました
動かし方で少し響いたようですが、そのまま足踏みしてもらうと
だいぶ軽いです!
さっきは7点くらいでしたが、今は?
2点くらいです
(EIL w/sag 10回 B)
もう一回やってみましょう
お元気な方なので、あと10回追加でやってみます。
さぁ、足踏みタイムです!
立っていただき足踏みしてみると…
痛みはさっきと同じくらいかな…2点くらいだけど少し違和感があるくらいでだいぶ違います
(EIL w/sag 10回 NE ただし痛みというより違和感に変化)
光が見えましたね!
エクササイズのポイントなどご説明し初回評価終了しました。
これまで近くの整形外科では痛み止めをもらうことしかなかったようで、痛み止めはさほど効いた感じはなかったものの飲まないより飲んだ方がいいかなという感じで服用を続けていました。しかし、ロキソニンなどに代表される非ステロイド性抗炎症薬 (通称:NSAIDs)は整形外科で頻用されていますが、副作用にも注意が必要なお薬です。胃潰瘍など胃腸障害を起こすことはよく知られていて胃薬を一緒に出されることも多いのですが、他にも注意すべき副作用として腎機能を低下させたり、あるいはもともとある腎機能低下状態を悪化させることがあり、注意が必要な薬剤です。
腰椎のエクササイズで改善する踵の痛みについてはこれまでにもブログでご紹介してきました。今となっては確認はできませんが、左膝が痛くなる前にあったという左踵の痛みについても、同じエクササイズで症状が改善するタイプの痛みであったのではないかと思えます。皆様は今回の左膝痛どうお考えになるでしょうか。