夕方になると左下腿が痛くて家事が続けられません
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左下肢痛で来院した50代女性のお話です。
お仕事は事務職で1日6時間ほどのデスクワークです。半年ほど前から左下肢にしびれたような感じを覚えるようになり、その後徐々に、夕方になると左下腿から足にかけて疼くようになりました。朝のうちは比較的良いのですが、家に帰ってから家事をしていると痛みが強くなり家事が続けられず、ソファに仰向けに横になったりして休んでいます。しばらく休んで痛みが軽くなったらまた家事を再開するようなパターンの生活が続いていて、かかりつけの内科の先生に相談したところ、当院を紹介されました。
痛みは夕方のひどい時で7〜8点(考えうる最大の痛みが10点満点として)程度。朝起きたときは痛みというより左太ももあたりの突っ張ったような感じはあるものの家事はできるくらいです。
腰を曲げているのが悪いのかと思い、座るときも腰をできるだけ伸ばすようにしていたのですが、まったく効果がありませんでした。その一方、ときに丸一日なんとも無い日もあるようで、それがどんなときに調子がいいのかは全く見当がつきません。
痛みが強くなったときは左下肢を片あぐらのように曲げると少し和らぎます。
片頭痛では痛み止めを内服しますが、左下肢の痛みは我慢していて痛み止めを飲んだことはありません。
しばらく座ったままでお話を伺ったあと、診察開始時点でもう一度、その時点での痛みの程度をお伺いすると、左大腿に2点、左下腿に2点の痛みがあり、これらをBLに評価を開始します。
まずは姿勢をしっかりと矯正して保持してみます。
痛いです
(姿勢矯正保持 2→4点 I-W)
数秒もしないうちに痛みが強くなり、もとの座り方に戻りましたが少し痛みが強くなった状態が尾を引いています。
立っていただき、腰椎の可動域を確認します。
前かがみをすると痛みが少し軽くなります。逆に腰をそらすのは左下肢の痛みが強くなりあまりできません。
横にずらす動きも痛みが少し強くなります。
(ROM 屈曲 2点、伸展重度制限 5点、LSG 4点、RSG 4点)
伺ったお話と腰の動きに対する反応をもとに、まずは座位での屈曲をしてみることにします。
反応を見ながらゆっくりと一回、特に問題ないことを確認しつつ、トータル10回屈曲した後にもう一度うかがいます。
さっきよりだいぶいいです
何点くらい?
1点か1.5点くらいですかね
座った状態で感じられていた痛みは半分くらいに改善したようです。
立ち上がって先程少し響いた横に動かす動きを確認します。
痛くないです
スムーズに動かせていて、しかもより深く横に動かせるようになったことがわかります。
(FISit 10回 B)
良い反応が見られましたので、もう一度座って、さらに深く、ゆっくりと同じ運動を10回。
今はさっきの痛みどう?
もう今は痛くないです!
やることがわかりましたね!
どういう動きで痛くない状態になるのかがわかりました。
座りっぱなしが悪いのかなと思って、座ってるときもできるだけ腰を伸ばすようにしてたんですよ
比較的長く座ってお仕事をされますから、骨盤を倒した座り方の練習を一緒にしてみます。
足の痛みどうです?
こうしてるとなんとも無いです!
一般には座りっぱなしでいることが多い方は、腰が丸くなっていて、伸ばすと良いことが多いのですが、皆さんがそうとは限りません。似たような生活習慣を持っている人たちを比べても、人の体はそれぞれ違いますし、体の動かし方ももちろん人それぞれ。この方の場合は腰を伸ばそうとすると痛みが強くなる状態でした。
SNSの動画を使った「腰痛ならこの体操でOK」とか「肩こりが1分で治る」などという体操のやり方を紹介しているものをよく見かけますね。それらをすべて否定するわけではないのですが、人それぞれに違う治り方をするのも事実です。
マッケンジー法は、様々なタイプの人それぞれにあわせたカスタム医療を提供する評価・治療システムなのです。