以前から時々腰の左側が痛いことがありました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左脚の痛みで来院された50代女性のお話です。
お仕事は一日中PC作業で座りっぱなしの事務職です。
かなり前から時々左股関節あたりが痛くなることがあったのですが、ストレッチなどして適当にしのいでいました。
3ヶ月ほど前から1ヶ月間ほど、毎日お客さんのお布団4組を上げ下げすることが続きました。
その後、特に変わったことはなかったのですが、今から一ヶ月ほど前に、椅子から立ち上がるときに腰の左側がギクッとした感じがあり、腰と左脚の痛みを覚えました。
1週間ほどは歩けないほどでしたが、その後、痛みは軽くなって座っている時にはさほど痛くないため放置していました。
座ってお話しているときの症状を確認しましたが、左下腿から足のジンジンしたしびれがあるものの痛みはありません。
姿勢を矯正してみます。
うっ、痛いです!
楽な姿勢に戻っていただくと、すぐに痛みはとれて先ほどと同じ状態です。
(姿勢矯正保持 P-NW)
次に立っていただき腰の動きを確認します。
立つと左臀部から大腿の痛みがあり、腰の伸展と横に動かす動きで左下肢痛が増強されます。
(ROM EXT、SG I-NW)
仰向けに寝ていただき両膝を抱えて1分ほど。
今は痛みいかがです?
今は痛くないです
しびれは?
しびれは同じくらいかな
立ち上がってもらい症状を確認します。
お尻から太ももの痛みはどうです?
少し軽くなりました
(FIL持続 B)
職場では寝転がるわけにはいかないので、座ってできる動きに対する反応をみてみます。
座って腰をゆっくりと曲げるやりかたをご説明した後にまずは1回、痛みがなく、めまいもないことを確認して続けてトータル5回。
足のしびれはいかが?
軽くなった感じがします
立っていただき、左臀部から大腿の痛みを確認します。
さっきよりいいです!
良い反応がありましたので、この座って腰椎を屈曲する運動負荷をさらにしっかりとやるやり方をご説明して今度は10回続けてやってから立ってもらい、左臀部から大腿の症状をうかがいます。
まだ痛いのは痛いですが、最初と比べるとすごく軽くなりました!
(FISit 5回 + w/op self 10回 B)
エクササイズの宿題を決めて初回の評価はここまでとしました。
これまでにも座りっぱなしのお仕事をしている人の腰痛や下肢痛のお話をご紹介してきました。
マッケンジー法・症例ファイルのブログ通の皆さんの中には、お仕事が座りっぱなしの方は腰が屈曲しがちなので伸展すると良い反応が得られるのでは?…と思われた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこの方のデスクワークのときの座り方をもう一度詳しくお伺いしたところ、少し後ろに椅子を引いて腰をそらすように座る癖があるということがわかりました。
デスクワークに加えて重いものをかかえる作業の連続。一見すると腰椎の屈曲負荷が増えたのだからその逆に動かすとよいかもと考えがちです。しかし、マッケンジー法ではお伺いした生活状況やどのようにして痛くなったのかという情報も参考にはしますが、それによってやるべきことを決めてしまうわけではありません。ある運動負荷をかけたときにどのような反応が見られるのかによって次に進むべき道を決めていきます。
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マッケンジー法・症例ファイルでご紹介してきた様々な症例の中から32話を選び、一般の方にも読みやすいように医学書のような難しい表現をできるだけ避け、各ページで使用されるマッケンジー法特有の表現などは別枠にイラストと解説を入れるなどして、用語の意味を別のページで検索することなく読めるような構成になっています。
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