特にきっかけもなく右手が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右手尺側痛があるという50代後半の女性のお話です。
特にこれといったきっかけもなく、2日前の朝に右手尺側に痛みを覚えました。昨日、さらに痛みが強くなり、受診当日は痛くてグーパーすらできなくなり来院しました。右手を左手でささえながら、まるで骨折しているかのような痛々しさ。見ると右手の尺側に軽い腫脹があり、自分では指はほとんど動かせません。
明らかな外傷などはなさそうなのですが、腫脹もありますし、念のため単純X線写真も確認します。
撮影のときも指を伸ばして撮影するのが一苦労。時間をかけてやっとのことで指を伸展させて撮影できました。
単純X線写真には異常は見当たりません。
手の症状ですが、明らかな外傷や誘因の聴取できない方は、基本的に頚椎から評価します。
もちろん、患者さんにも手の症状でも首が原因であることは非常に多いことを説明して、納得していただいてから評価をします。
お話を伺う限り特にレッドフラグなどありません。
じっとしているときもかなり痛い様子で、この動かさない時の痛み5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、少しだけ曲げようとする時の7点の痛みをベースラインとして評価を開始します。
座っている姿勢は少し悪いようです。
姿勢を矯正してお話を続けながら保持して30秒ほど……わずかに痛みが軽くなったようだと言われます。
それでも、まだ、ホントに首なのかしら……という表情です。
姿勢の矯正で良い印象ですので、続けて顎を後方に引く動きを繰り返していただきます。
痛みはどうです?
さっきより楽になりました。3点くらい……
自分で指を曲げ伸ばしを少ししてみると、まだわずかですが指が動かせます。
(反復RET 10回 B 疼痛5→3点)
さらに負荷を上げてしっかりと頚椎の伸展をしてみると疼痛レベルはかわらず3点ではありますが、先ほどまでの激痛ではなくなり自分で指が動かせると言って指を自分でグーパーされています!
(RET+EXT10回 B)
腫れも多少あるため湿布を処方し、姿勢とエクササイズの注意点など指導して初回セッションを終了しました。
それから1週間。
ニコニコ顔で受付にいらっしゃいました。
症状はほぼ消失していて、右手尺側の軽いだるさのみになっています。
お伺いすると、受診当日はかなりしっかりエクササイズを行い、翌日にはすでに痛みは2点程度に改善していたようです。さらに3日目にはほとんど気にならないレベルに改善してしまったとのこと。
あまりにも劇的に良くなったので、自分の体験を職場の皆さんに話してクリニックを宣伝してくださっているようです。
ところが、その後はエクササイズはさぼりがちとのこと。
もう少しエクササイズを続けることをおすすめしましたが、このご様子だとなかなか難しいかもですね。
今回来院されたことで、同じような症状が起こった時に、どのように対処するかは覚えてもらえたようですので、とりあえずセルフマネジメントしていただくことにしました。
時にぎっくり腰にもなるようで、そのときにもまずはこちらに来るとおっしゃってくださいました。
痛いところが少し腫れている状態なので急性炎症性疾患は否定できない状態でしたが、評価の結果は指に触ること無く頚椎のエクササイズのみで、その場で症状が軽減したところをみると、おそらく局所の炎症では無く、頚椎に関連した症状だったと考えられます。
このように手が痛くて腫れている場合でも、脊椎に関連した症状のこともあるということをお伝えできれば幸いです。