有痛性外脛骨なのでしょうか…
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左足の痛みで来院した10歳男児のお話です。
2ヶ月ほど前からフラッグフットボールを金曜日と日曜日に2時間しています。3週間ほど前からフラッグフットボールの後に左足の内側の骨の出っ張りが痛くなってきました。翌日には良くなって普通に歩けるため放置していたのですが、押すと痛いため来院しました。現在は左足内側の舟状骨の隆起している部分に7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の圧痛があります。
単純X線写真で確認すると、いわゆる外脛骨(Veitch分類 Type II)が確認できます。
痛みの部位と単純X線写真の所見から一般的には有痛性外脛骨と呼ばれる状態のように見えます。
しかし、マッケンジー法では……そう、このような場合であっても必ず脊椎のスクリーニングを行います。
姿勢は特に悪いこともなく、普通な感じです。
姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。
さっき押したときの痛み覚えてるね。あれが7点だとしたら今はどう?
3点くらいです
はっきりとした痛みの変化がありましたので、腰椎の評価を続けます。
腰椎の可動域など問題ありません。
元気なお子さんですから、うつ伏せでしっかりと腰をそらす動きを負荷を強めに10回続けてみます。
もう一回押してみようか、どう?
あんまり痛くないです
何点くらい?
1点くらい…
(EIL w/sag 10回 B)
かなり明確な症状の改善がありましたので、うつ伏せのエクササイズを朝夕寝る前などと、フラッグフットボールの前後などにするのを宿題にしました。
それから一週間後。
体操を始めてから、痛みはだいぶいいようです。
エクササイズはというと……朝1セット、夜1セットだけ。
普通に走ったりするのはなんともなくなったのですが、押すとまだ3点くらいの痛みがあります。
姿勢は気づいたらやっているとのことですが……
今の姿勢はどう?
気を抜いていると少し猫背になっているのがわかります。
姿勢のポイントを確認すると、どこをどうすべきかはちゃんと覚えているようです。
もう一度、足の痛いところを押して3点の痛みがあることを確認できました。
エクササイズをチェックしてみます。
もう一回押してみようか、どう?
1点くらい
(EIL w/sag 10回 B)
楽に伸展できているので、両手の下にタオルをロールにして高さを上げてさらに10回やってもらいます。
何点くらい?
今は全然痛くないです!
(EIL w/sag タオルロール両手の下 10回 B)
昼間はうつ伏せになれないようなので、立ったままでのエクササイズもやり方を説明してやってもらいます。問題なくできていて、痛みも消えたままです。
もしまた痛くなったらどうするか?
体操をする?
体操をしていても痛くなったら?
……?
サボってないか、サボってないならしっかりときついくらいにできているかを自分でチェックしたらいいかもね!
などポイントをお話し2回めのセッションを終了しました。
整形外科の病院にかかると痛みがある部位を単純X線検査で確認することはよくあります。当たり前の事ですよね。そしてその症状を説明しうる何らかの異常所見がみつかったとき、その異常所見が痛みの原因であるとされて、それに対する治療を行うという流れで治療は進んでいきます。
しかし、今回ご紹介したお話では、本人に足の痛いところを確認してもらうことはしましたが、このお子さんに手を触れることすらないままに、腰椎伸展のエクササイズを続けた結果、足の痛みが改善してしまいました。
外脛骨の押すと痛い状態が腰椎の伸展エクササイズの直後に改善するのですから、私からみると、この足の痛みは腰椎に関連があると考えるのが自然だと思えるのですが、皆様はどのようにお考えになるでしょうか。