2ヶ月ほど前、サッカーをしていて両膝が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両膝が痛くて来院した10代男児のお話です。
2年ほど前に一度左膝が痛くなり、姿勢の指導をしてその後良くなったことがあるお子さんです。
その後はまた姿勢を意識することなく生活して問題なかったので、いつしかソファにダラリが多くなっていました。
一ヶ月ほど前に、1mほどの高さのブロック塀から飛び降り、その時はなんともなかったのですが、その後、サッカーで走っていて両膝の前が痛くなったので飛び降りたせいかなと思っていました。
サッカーは週に一回、1〜1.5時間くらい練習します。この一ヶ月ほど、走るときに両膝の痛みが続いています。歩くときはなんともないため放置していたのですが、あまり長引くため受診を決めました。
今も座って両膝をピンと伸ばすと膝前面あたりが3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあり。しゃがみ込むと痛みは6点と強くなります。
両膝の腫脹はなく、膝はもちろん、腰の可動域も正常です。
だらりとした座り方を続けているようで、姿勢はよくありません。
まずは姿勢を矯正して1分。
先ほどとお同じ膝を伸ばす痛み、しゃがみ込みの痛みを確認すると、膝伸展2点、しゃがみ込み5点とどちらも少しだけ軽くなっているようです。
この程度では本当によいのかどうかわかりませんので、もう少ししっかりと伸展方向の負荷をかけて評価を続けてみます。
立った状態での腰椎の伸展を10回してから、もう一度、さきほどの症状を確認します。
座って膝伸ばしてみようか
もうゼロに近いです
しゃがむのはどうかな?
3点くらい…
(EIS 10回 B 伸展0点 しゃがみ込み3点)
さらに5回追加してみます。
今は2点くらいです!
(EIS 5回 B しゃがみ込み2点)
はっきりとした改善がみられましたので、このエクササイズと良い姿勢を心がけることを宿題にして初回評価終了しました。
それから6日後。
昨日のサッカーはなんともなかったようです。
エクササイズは昨日2セット。姿勢はどうかなというくらいで、お母さんに言われたときだけ気をつけているくらい。
エクササイズをチェックしてみます。
体操はそれなりにできていますが、念の為、確認してみます。
この体操、何がポイントだったか覚えてる?
?
腰に意識を集中することの大切さを再度説明しました。
手足のある部分が痛くなった時、その直近で何があったかを思い出して、あぁ、そういえば……とそのイベントの後に痛くなったと考えがちです。
今回はブロック塀から飛び降りてからと本人は思っていました。その後、サッカーで走っているときに痛くなったのは間違いなく、ジャンプして着地した刺激が何らかの症状を誘発する引き金になった可能性は否定できません。
しかし、よくお話を聞いてみると、1mほどの高さはさほどの高さではないですし、そのときに膝を打ったわけでもなく、捻ったわけでもなく、そもそも飛び降りた直後はなんともありませんでした。
これもある意味、外傷もどきと呼べる病態なのかもしれません。