一週間ほど前に車の半クラッチをしてから続く左足背痛
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は一週間ほど続く左足背痛で来院された60代男性のお話です。
定年で退職した後、2ヶ月前から現在の会社で仕事を始めました。現在の会社では重いものを抱えたりすることも多いようです。
一週間ほど前に車のタイヤが道路ではまり込んでしまい、抜け出すときに半クラッチを続けて抜け出したときに左足を使ってから左足背が痛くなったと言われます。
左足を見ると、母趾の付け根から中足部あたりに軽度の腫脹がありますが、足趾を屈伸してもらっても痛くありません。
歩いていただくと、その腫れた部位に3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあります。
姿勢がやや悪いので、まずは姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。
もう一度歩いていただくと、さっきより少しいいかなという感じです。
左足の症状ですが、マッケンジー法では下肢の症状は腰椎の評価から行います。
姿勢の矯正でややよい印象だということと、最近の仕事の内容で重いものを抱える業務が多いという情報もあわせて、まずは伸展方向から評価することにします。
やや長身の方ですので、通常の流し台では高さが低く、診察室のデスクに収納した椅子の背もたれに腰をもたせて、しっかりと10回伸展してから、先程と同じように歩いてもらい、痛みの程度を伺います。
今は1点くらいです
(EIS椅子の背もたれ 10回 B)
痛みは半分以下になってますので、このエクササイズを宿題にすることにしました。
宿題の説明などをしてから、念の為、ポイントを理解しておられるのか確認のため再度同じエクササイズをチェックしてみます。
エクササイズ前の歩行時の痛みは1点と先ほど軽くなったままです。
椅子の背もたれをつかってしっかりと5回、上手にできています。
歩いていただき痛みの程度を確認します。
あぁ、変わりますね!だいぶ軽くなります!
さっきが1点だったら今は?
ゼロじゃないって感じですかね
(EIS椅子の背もたれ 5回 B)
それから1週間後。
だいぶよいのですが、まだ少し痛むようです。
エクササイズの実施状況をお伺いすると、昼間にエクササイズができない状態が続いています。
今は歩くときに2点の痛みで、前回よりは良いようです。
エクササイズをチェックします。
腰に意識を集中して5回、しっかりと腰を伸展するエクササイズをやっていただきます。
歩いてみましょうか
あぁ、だいぶ違いますね〜
(EIS 腰をしっかり前に押し出すように 5回 B)
やはりしっかりと腰椎を伸展すると症状が軽減されます。
今回はクラッチの使いすぎで痛くなったと思っていた左足の痛みで、少し腫れもありましたが、マッケンジー法で評価した結果、腰椎の伸展で症状は改善してしまいました。
たとえ足の局所的な痛みであっても、本当にその部位に問題があって痛いのか……それは腰椎から順に評価してみないとなんとも言えないのです。