物を持ち上げるときにグキッとなった後から両母指の痛みがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両母指の痛みで来院された30代女性のお話です。
2週間ほど前に物を持ち上げるときに両方の親指に負担がかかってグキッとなったようで、その後、両母指が痛くなりました。
今も両方の親指を曲げるときに痛みがあります。
両母指の症状なのですが、マッケンジー法の評価は……もちろん頚椎からですね。
頚椎の単純X線写真では頚椎の前弯が消失したストレートネックの状態です。
軽い猫背がありますので、まずは姿勢を矯正して保持すること1分。
もう一回、親指曲げてみましょうか
痛いです…でもさっきは曲げるときにいたかったのが、今は伸ばすときに痛いです……
同じ親指の同じ部位が痛いんですが、痛むタイミングが変わりました。
頚椎の可動域を確認しますが、特に問題ありません。
姿勢の矯正だけでも痛みの感じ方に変化がありましたので、引き続きいい姿勢からさらにしっかりと反らす動きを繰り返してみます。
こうやって反らすときに、なんかボワンと痛みが広がるような感じがします
動きを戻すと元通りなので続けます。
5回終わってからもう一度、両方の母指を曲げ伸ばしして痛みの具合を確認してもらいます。
左は痛くないです!……右はまだ痛いかな……
(SOC 5回 B)
かなり反応が良い印象ですので、とりあえずこのエクササイズを宿題にしました。
それから8日後。
ほとんど良くなったようです。
エクササイズは5セット/日くらいはできました。
現在の症状を確認すると、右母指をしっかり曲げるときに1点の痛みがあります。
エクササイズをチェックします。自分でやっていたように宿題の胸を出して顎をしっかり引いて背中をぴーんとそらすような動きを5回。上手にできています。
親指を曲げる感じどうですか?
軽くなります!
ちゃんと効果が確認できましたので、このままこのやり方を続けることにします。
持ち上げるときに捻挫したとばかり思ってました…
皆さんも心当たりがあるんではないでしょうか。あるところが痛くなったときに、あれっ、どうしたんだろ……そういえばさっきのあれかな?いやそういえば一週間前にやった作業で負担がかったかな?……といったようにその理由探しをします。そしてその頃やっていた作業などを思い出してそのせいで痛くなったと思ってしまいがちです。
もちろんそれが引き金になったのかもしれません。しかし、実際にはマッケンジー法で評価してみると今回のように指の痛みであっても脊椎のエクササイズで改善する、脊椎に関連した痛みであることは少なくないのです。