2年ほど前から右膝の痛みがあり、最近は左膝も少し痛みます
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は2年来の両膝の痛みで来院された50代男性のお話です。
お仕事はデスクワークで一日中座りっぱなし、家ではあぐらかソファに座るような生活です。
毎日座りっぱなしで外に出られないのかと思いきや、毎週末に登れるときには可也山(標高365m)に定期的に登っているそうで、体力には問題ありません。
そのような習慣にはなんら変わりなかったのですが、2年ほど前からふと右膝が痛いと思うようになりました。山の上りでは痛くありませんが下りで痛みます。座って体重が乗っていない時でも、右膝を横に動かすような動作で右膝の内側が痛みます。左膝はあまりどこなのか、はっきりとはわからない軽い痛みくらいで右膝ほどは気になりません。正座すると痛いので正座ができませんが、お風呂で体重があまり乗らないようにすると正座はできます。しかし、その正座の状態から立ち上がるときには、やはり膝が痛みます。
現在も座って膝を横に動かすような動きをすると軽い痛みがあることを確認しました。
姿勢が悪く猫背ですので、まずは姿勢を整えて1分ほどしてから再び同じ動きをしてもらいます。
さっきより痛くないですね…
腰の評価を続けます。
腰椎の可動域はいずれの方向も中等度に制限されていますが、とくに膝の痛みを誘発する動作はありません。
山登りを毎週できるくらいの体力がある方ですので、まずはうつ伏せになってしっかりと負荷をかけつつ腰の伸展を10回してから、先ほどと同じように座っていただき、膝を動かしてみてもらいます。
今は痛くないです!
(EIL w/sag 10回 B)
正座をしていただくと、
あ、これはやっぱり痛いですね…3点くらい
伸展方向の負荷をかけると良い印象ですから、さらに10回、うつ伏せで腰を伸展する動きを頑張ってもらいます。
正座してみましょうか
先程痛かった正座をもう一度試します。
今はあまり痛くないです!
(EIL w/sag 10回 B)
日中にはうつ伏せになれないことも多いと思われますから、立ったままでできる腰の伸展エクササイズもやってみましたが、先程改善した状態と変わりなく、上手に伸展できていますので、これも外出時のオプションとしてやっていただくことにしました。
(EIS NE)
それから8日後。
以前感じていた痛みの4割位にはなったようで、かなりよいようです。
今朝も可也山に登ってきましたが、山頂でもお約束の立ったままでできる腰椎伸展エクササイズをしっかりとやってから下山したところ、下りは痛みをさほど感じずに降りることができました。
現在歩行時痛はありませんが、右足でケンケンすると2点の痛みがあります。
エクササイズをチェックしてみます。
もう一回けんけんしてみましょうか
あっ、今は痛くないですね!
(EIL w/sag 10回 B)
頻度は十分にできているので、もう一つお伺いしてみます。
このエクササイズのポイントはなんでしたっけ?この前ご説明したときに2つマークした言葉があるんですが…
頻回にやるというのがあったと思うんですが、あとなんでしたっけ……
そのもう一つが意外に抜けやすいところなんですよ
「できるだけ」という、しっかりと動かすことの大切さを再度ご説明しました。
この方はとても理解の早い方で、エクササイズも問題なくできていたのでこうして結果も出たことには違いありません。
一方で、このように早く良くなる方は、ある意味、注意が必要です。
それは、エクササイズのやり方が身につく前に良くなってしまうため、エクササイズを忘れてしまったり、エクササイズを続けていてもいつしか効かないエクササイズに変わっていたりすることがあるからなのです。