一年ほど続いている右手関節の痛み
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は一年ほど前から右手を突いたときに痛みがあるという50代女性のお話です。
実はこの方、以前両膝が痛くて当院にかかったことがあるバドミントンが趣味の方で、マッケンジー法により評価した結果、腰椎の伸展で症状が良くなった事があります。
痛みだけではなく膝がグツグツしていたのに、それも腰の伸展で良くなったので、とても驚いておられました。
さて、今回は、右手関節の痛みなのですが、よくお伺いしてみると、実は両膝のことで受診された時もすでにあった症状だそうです。その頃は膝のことで困っていたのでお話には出なかったようです。
ふいに手を突いたときに8点ほどの痛みが走り、今はそのことが気になっています。
症状の再現を試みますが、今は手をつく動作ではあまりはっきりしません。
机の手前を手のひらでグーッと押す動作で5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)くらいの痛みが再現できることが確認されました。
姿勢が悪いので、まずは姿勢をしっかりと整えて1分。
机の角を押すのをやってみましょうか
…あっ、今はさっきより痛くないです…3点くらいかな
やっていただいたのは姿勢を整えただけなので、頚椎に関連した痛みが疑わしくなります。
もちろんマッケンジー法では引き続き頚椎の評価を続けます。
頚椎に可動域制限はありません。
もともとバドミントンをするくらいの運動が出来ている方ですから、最初からやや負荷を強めにしっかりと伸展してみます。
まずは1回行い、特に問題のないことを確認して続けて全部で5回、しっかりと伸展してみます。
もう一回やってみましょう
…いまは…全然痛くないです!
何度も押しながら確認してもらいますが、痛みは消えています。
(RET+EXT w/op self 5回 ER意識して abolish B)
しばらくご説明をした後、本当かな?と思ったのでしょうか、自分でもう一回机を押してみて、
やっぱり痛くない…ウソみたい…
このように一年間続いた痛みであっても初回の評価で痛みが完全になくなることもあります。
しかし、このように速やかに症状が軽快した方にはより丁寧にご説明するようにしています。
それはすぐに良くなった方は、姿勢やエクササイズを行う習慣が身につかないうちに良くなってしまうため、パタリと姿勢やエクササイズをやめてしまう傾向にあり、数日後、数週間後、あるいは数ヶ月後に、また同じ症状が出てくる事があるのです。
そのようなことまでご説明した上で、症状が再発しないように、言い換えればほんとうの意味での卒業ができるように、予防のための教育を行うこともマッケンジー法の重要な部分なのです。