ヘバーデン結節があり変形して腫れていて、物にあたると痛みがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は変形した指の関節が痛むという50代女性のお話です。
ご家族にも同じような指の変形があり、ご自分の変形も何年も前からありますが、数年前から指先に時々痛みを覚えるようになりました。
現在は左の示指と小指のDIP関節(いちばん爪に近い関節)が物などに当たると痛いようです。
単純X線写真ではDIP関節の裂隙が狭小化(関節の軟骨がすり減って隙間が狭くなること)していて、いわゆるヘバーデン結節と呼ばれる指の変形する病気だとわかります。
グーパーするとき、示指、小指のそれぞれの関節とも2点(考えうる最大の痛みが10点満点として)がありますから、これらをベースラインにして評価を続けます。
指の変形があって、その関節の症状だから指の診察をしていくのか…、いえ、マッケンジー法では上肢の症状は頚椎からでしたね。
座位の姿勢をチェックすると、首が前に出た姿勢です。
(Protruded head +)
姿勢を矯正して保持すること1分。
もう一度グーパーしてみましょうか
あっ、ひとさし指は少し痛みが減りました!
何点くらい?
1点くらいかなぁ
(姿勢矯正保持 B)
良い反応のようです。頚椎の可動域を確認します。可動域に制限はなく、自由に動かせます。
そこで、最初から比較的強めの負荷をご自分でかけながら頚椎を伸展するやりかたをご説明し、しっかりと5回伸展していただきます。
グーパーしてみましょうか
あっ、痛くない!
0点?
ひとさし指は0点です!…小指は…0.1点くらいです
(RET+EXT w/op self 5回 B)
それから2日後。
すっかり良くなったようです。
痛みのあった関節の腫れ具合も軽減して変形のあるDIPの部位の突っ張ったテカテカ感がなくなっていることがわかります。
エクササイズは結構頑張ったそうで、昨日は首周りの筋肉痛があったのですが、今日は良くなっています。
それと一つ気づいたんですけど
数年来の両足の重だるさがあって、じっと座っているときも足を動かしてないと気になっていたのが、ふと全くなくなっているのに気づいたのだそうです。
もう何年も前からある症状で、諦めていたんです。それが、ふと気づくと全くなくなっていて…これはお話しておかないとと思いました!
エクササイズチェックします。
非常に丁寧にできているのですがもう少ししっかりとできそうなところを修正してご説明し、今後の注意点などご説明して卒業としました。
もちろん関節リウマチのような病気で関節の痛みが炎症によるものの場合は今回のような経過で改善することはないかもしれません。
しかし、指の変形がある関節が痛むとき、その痛みが実は頚椎に関連した痛みであることも少なくないのです。
加えて、今回は何年も前からあるという両足の重だるさまで改善したことをご報告いただきました。
この方は事後報告でしたが、手足の両方の症状があるときに、頚椎の評価をしているときに足の症状が改善したり、腰椎の評価をしているときに手の症状が改善したりすることは稀なことではありません。
マッケンジー法では姿勢を整えることを最も重要なことと考えています。この姿勢を整えることで、なんらかのメカニズムにより手足の疼痛などの症状を改善するコンディショニングになっている可能性があると考えています。