左肩の痛みが治まって、今度は右肩と右脇のあたりが痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右側胸部の痛みで来院された60代女性のお話です。
3日前に左肩が痛くなったのですが、何もすること無く1日でよくなったと思ったら、今度は右肩と右脇あたりが痛くなりました。体をひねる時に痛みます。
家では低い椅子に脚を伸ばして背を丸めて座る事が多いようです。
姿勢が悪いため、姿勢を矯正して保持すると症状が軽減することが確認できましたが、戻るとまた元通りです。
(姿勢矯正保持 D-NB)
左右ともひねり動作で痛みがありますが、どちらかというと左にひねるほうが痛いようです。
座ったままで矯正を強めた姿勢とだらりとした姿勢を繰り返す動きを続けてみます。
しっかりと腰をそらした状態からだらりとした姿勢に戻る途中で痛みが出ましたが、繰り返すと出たり出なかったりのようです。
(SOC PDM over-correct → slouch)
もう一度からだをひねってみましょうか
今は右にひねるほうが痛いですね…
体を動かすことで少し変化があります。
このままさらに負荷をかけていくのも一つの評価の進め方なのですが、人それぞれにやることを加減します。
この方の生活の様子など考えて一番できそうなことだけに集中して続けてみるというのもよいと判断して、この僅かな変化をもたらした座ったままで腰を反らしたり緩めたりする体操のみを宿題にしてみました。
その翌日。少し良いようです。
初回のときのように反らした状態から戻る途中に一箇所痛いところがあるようですが過ぎると痛くありません。
左右に体をひねる動作はどちらもまだ痛みがあります。
こうしたら少し楽になるというようなことは有りましたか?
右側を下にして寝ると痛いので左下にして寝てるんです
このような姿勢による症状の変化はマッケンジー法による評価では重要な意味を持っています。
座った状態で、右臀部に折り曲げたタオル2枚をいれて座面の右側を高くして先ほどと同じように体をひねってみます。
さっきより痛くないみたい…
腰をそらして戻る動きをもう一度やってもらいます。
今は痛くなかったですね……
今度は戻るときに痛くありませんでした。
そこで、この座面の右側を高くして同じエクササイズを続けていただくことにします。
それから2日後、夜が寝られるようになったようです。
エクササイズをしていただくと、戻るときに少し痛むのと、左右に捻るのは相変わらず痛いようです。
座面にタオルを入れることにしていましたが、何度か家でやってみて、傾けると違和感があるのと、入れてもあまり変わりないような感じなので外してしまったようです。
それから1週間後、初診から10日目になります。
ときにピリッと痛みがありますが、痛む場所が少し前の方に移動したことに気づかれました。
寝返りももう大丈夫のようです。
今伸ばして痛みでますか?
腰を反らして戻りながら、
今来ました
数回繰り返し、一休みします。少し休憩を挟んでまた続けると違う反応がでることがあります。
あと5回やってみましょうか
終わった後、
今痛み出ました?
今は痛くなかったです
姿勢については意識しておられるようで、見た感じも比較的姿勢良いようです。
もうほとんど良くなってきていて、姿勢を意識できているのであとは自分で管理できそうなので、卒業でよさそうです。
完全に治った後に姿勢のことを忘れてしまって、しばらくしてからまた同じ症状で来院される方があることなどご紹介し、良い姿勢を続けることの大切さを再度お話しておきます。
今回、エクササイズと症状の改善との関係がはっきりしませんでしたが、毎回痛みの出る動きは変わらなかったものの、やり方により症状の出方が変化していました。
マッケンジー法ではこのようにメカニカルな負荷に対する反応が良くも悪くも変化したとき、その変化をもとに次にどのように評価を進めていくのかを決め、症状改善の方法を探っていきます。