case_127 左肩痛

5日ほど前から左肩から上腕にかけての痛みがでてきました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左肩から上腕の痛みで受診された40代女性のお話です。

製造業のラインで仕事をしていますが、5日ほど前から特に思い当たるような負担がかかったわけでもなく、左上腕の痛みを覚えるようになり、その後、徐々に痛みが強くなり、左手を使うだけでも響くようになってきたため来院しました。

姿勢が悪く猫背ですが、姿勢を矯正して保持しても特に変化はないようです。

(姿勢矯正保持 1分 NE)

左肩の動きは痛みのために多方向に制限されています。

(左肩前方挙上 3点、外転30° 5点、伸展30° 5点 HBB 7点、外旋0° 5点)

頚椎のROMはいずれの方向も軽度に制限されている程度です。

お仕事内容などについて伺った情報を参考に、まずはしっかりと顎を引く動作を繰り返してみます。

A子さん
A子さん

少し動かしやすくなったような感じがします

少し良いように見えますので、さらに伸展まで加えて5回。

手を横から上げる角度が少し大きくなっていることがわかります。

(RET+EXT 5回 B 外転 45°↑)

さらにしっかりと負荷を上げて5回。

A子さん
A子さん

あぁ、これもさっきより動かしやすくなりました

(RET+EXT 両手を太もも、胸椎伸展意識して 5回 B 外旋15°)

まだ痛みについてはさほどの改善している感じがないのですが、このように、あるエクササイズで可動域が増えているときには、基本的にそのエクササイズを続けてみる価値がると判断します。

リハビリの方針や自宅でのエクササイズなどご説明した後、お名前を書いていただいているとき、

A子さん
A子さん

さっきまで手を動かすだけで痛かったんですが、今はそこまで痛く無いです

受付して問診票に字を書いているときには痛かったのですが、評価後は書字動作で痛みが出ないことを自覚されているようです。

その翌日。

かなりよいようです。
昨日の来院前までは痛くて動かせない状態だったけれど、エクササイズを始めてからは痛いけど動かせる感じに変わったとのこと。

昨日よりは動きもわずかに改善し、痛みも概ね1-2点は下がったようですが、まだまだです。

エクササイズをチェックします。しっかりと伸展するところをもう一度ご説明してやっていただきます。

すると、脇に肘を付けた状態で手を外側に動かす動作もしやすくなりました。

(胸椎のEXTを意識してRET+EXT w/op self 5回 ROM 外旋が25°↑ B)

日中、座ってやるエクササイズだけではやる頻度が少ないようですので、立ったままでやってみて問題なくできることを確認しました。

そして初診から17日目。

少しだけ違和感的な感じがある程度で、痛みというほどのものはないようです。

動きを確認しますが、いずれの方向に動かしても痛みのレベルは1点もない程度になっています。

念のため、今回もエクササイズをチェックします。

まず、ご自分の普段やっているとおりに5回やっていただきます。

外側から手を挙げる動作が少しいいかなという感じで改善はするようです。

しかし、エクササイズが終わった後にあまりきつそうではないように見えます。

佛坂
佛坂

自分だったらこうするっていうやりかたをやってみますから見ててくださいね!

しっかりと出来る限りいっぱいに伸ばし切ることを意識するのはどんな感じなのかわかりやすいように、ときに自分で実演して見せることがあります。

やり方をイメージできたところで、さらに5回。終わった後に「ふーっ」という感じまで出来ました。

佛坂
佛坂

手を上げてみましょうか

A子さん
A子さん

あっ……痛くないかも

佛坂
佛坂

もう卒業にして大丈夫でしょうかね?

A子さん
A子さん

はい!

このようにちょっとしたエクササイズのやり方の違いで症状の改善度がガラリと変わることは、これまでの症例ファイルでもご紹介してきました。
マッケンジー法では基本的なエクササイズの形はありますが、皆が一律に単に本に書かれた通りにやるというものではありません。
体の柔軟性の程度や年齢、生活環境、他その患者さんについての様々な要素を考慮した上で、症状が改善できるカスタマイズされた方法をその患者さんとともに探っていくのもマッケンジー法による評価・治療の考え方の一つなのです。