時々きっかけもなく両脚のあちこちが痛くなります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左膝痛で来院した13歳男児のお話です。
実はこのお子さん、以前から時々これといった思い当たる原因もなく右足首と左踵が痛くなることがあったことを自覚していました。
数ヶ月前に左踵が痛くなって来院したときに腰椎の屈曲エクササイズで速やかに症状が消失して、その後しばらくたってから、右足首と左踵が痛くなったときに再来し、再び屈曲エクササイズで速やかに症状は改善したという病歴があります。
このような感じで原因となるようなエピソードなしに繰り返しあちこちが痛くなる……マッケンジー法ではある分類を示唆する有力な情報となります。
今回は昨日走っていて、捻ったわけでも負担の大きな走り方をしたわけでもないのに左膝が痛くなってきました。
これまでの病歴を見ても、もちろん見なくても、膝の症状ですから…そう、腰椎から評価を行います。
腰椎の可動域には全く問題ありません。
現在は歩く程度では全く痛くないのですが、左足のけんけんをすると3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが出ますので、これをベースラインとして評価開始します。
最初から負荷を強めにしっかりと腰を屈曲してみますが、けんけんの痛みは増えも減りもしません。
(FISit w/op self 10回 NE)
次に立ったまましっかりと伸展してみますが、これまた影響なしです。
(EIS 10回 NE)
さらに腰を横に動かす動きも影響なしです。
腰の動きについてはかなりしっかりと負荷をかけてみましたが、症状は良くも悪くも全く変化しません。このような場合、過去の病歴を参考にしてこのまま腰椎の評価をする(負荷を上げるかやり方を変える)のもありですが、今回は膝の評価に進むことにしました。
座ってもらい、自分で膝をしっかりと伸ばすことを繰り返してみます。
けんけんしてみようか
さっきより少しいいです
(膝EXT非荷重 10回 B?)
今度は立った状態で少し体重を載せながらしっかりと伸展を10回やってみます。
すると、途中から、だんだんとけんけんの時と同じ痛みが出てきました。
けんけんしてもらうと、
さっきより痛いです
(膝EXT荷重 10回 W)
点数にして5点と悪くなりました…が、マッケンジー法ではこのように悪くなった場合でも、その時、症状がどのように変化したかを参考にしつつ次にどうするのかを決めていきます。
座ってもらい、左膝を抱え込むようにしっかりと曲げる負荷をかけてみます。まずは10回。
もう一回けんけんしてみようか
さっきより痛くないです。3点くらい
(膝FLX非荷重 w/op 10回 B)
いい反応が出ましたので、もう10回続けてからけんけんしてもらいます。
…だいぶいいです、1点くらい
(膝FLX非荷重 w/op 10回 B)
エクササイズについてご説明して初回セッションを終了しました。
そしてその翌日。
もう全く痛くありません。
家に帰って2セットした後くらいから痛みは完全に消えてしまったようです。
でも約束通り、今日も症状は無いですが、しっかりとエクササイズはやってくれました。
けんけんして確認しますが、全く問題ありません。
もしまた同じように痛くなったらどうする?
また同じように膝を曲げるのをやってみて、だめだったらまた来ます!
過去に踵や足首の症状が腰椎のエクササイズで改善したことがありましたが、今回は膝のエクササイズで症状が改善しました。
では将来、もし同じお子さんが下肢のどこかが痛くなったといって来たときにはどうしたら良いのでしょうか…やはり腰から評価します。
マッケンジー法では下肢の症状がある場合には腰椎から評価することはこれまでもご紹介してきました。
一貫してマッケンジー法の評価システムに従うことで、結果として最も漏れが少なく効率的な評価が可能となるのです。