数年前に左膝の半月板損傷と言われ手術を受けましたが症状は変わりませんでした
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は数年来の左膝痛で来院された60代男性のお話です。
1年以上前に肩の痛みと臀部痛で来院された男性がいらしたのですが、その方がとても経過が良かったこともあり、これまで何人かのゴルフつながりのお友達をご紹介いただいたことがあります。
もちろんたまたま経過の良い方ばかりだったのだと思いますが、ご紹介くださった皆さん喜んでおられると今回のご紹介についてお尋ねのときにお話くださいました。
そしてこの方も、やはりゴルフ仲間だそうです。
整備のお仕事ですが、最近は重いものを持つことができなくなり、主に車の運転と出た先での見回り、作業などが主なお仕事のようです。
3年ほど前にこれといった思い当たることもなく左膝が痛くなりました。近くの整形外科にかかり半月板が傷んでいる（半月板損傷）と言われて半月板の手術を受けたのですが、その後、症状は変わりませんでした。左膝をかばっているためか、ときに右膝も痛くなるようです。そして、ゴルフのスイングのときにフォロースルーをするとき、左殿部と左股関節あたりに痛みが走るようです。このため、しっかりと振り抜くことが出来ません。
しゃがんで前に落ちているものを拾うようだ動作をするときに左膝に痛みが走り、深くしゃがめません。再現できるかやっていただくと、やはり浅くしゃがんで前にかがむと3点（考えうる最大の痛みが10点満点として）の痛みが走ります。椅子からの立ち上がりも3点程度の痛みがあります。スイングのフォロースルーのように左側に上半身を軽くひねっていただくと、やはり左殿部と鼠径部に3点の痛みが走ることを確認できました。
腰椎の可動域を確認すると、屈曲（前屈）は中等度に制限されています。他の動きの制限は軽度です。
さて、最近の生活状況などもあわせると、腰椎の屈曲に偏っているような印象でしたので、立ったままで腰をそらすやり方をご説明し、まずは一回だけしっかりと腰をそらしてみます。特に問題ないようですので、続けてトータル10回。
もう一度、座ってください。さっきの立ち上がるときの痛み、3点の感じ覚えておられますよね？ではもう一度立ち上がってその痛みを確認してみてください
すっと立ち上がり、
今は……なかったみたいです……
全然？
はい
（EIS 10回 abolish B）
どうやら方向性は見えましたので、練習の意味も込めて、続けてさらに10回、しっかりと腰をそらしてみます。
もう一回椅子に座ってから立ち上がってみてください
痛くないです
左に腰をひねるやつやってみましょうか
左に腰を捻りながら、
これも痛くないです！
それとしゃがむの忘れてましたね。しゃがんでものを拾うのやってみましょう
すっと深くしゃがんで、また立ち上がり、
痛くないです！
解決しちゃいましたね
さっきまでこんなに立ち上がれなかったのに……
もちろん、このように結果が早く出る方ばかりでは無いことは言うまでもありませんし、この方はたまたま最初に考えた方向が正しかったにすぎません。中には腰を伸ばすと逆に症状が悪化する人で腰を曲げて良くなる人も、横に動かして良くなる人も、ひねりの動作でよくなる人も…人それぞれなのです。
しかし、特定の動きを繰り返すことで良くなるタイプの病態には数年来の症状がものの数分で良くなってしまうことも決して稀ではないことをお伝えできれば幸いです。
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