case_97 左下肢痛

一年来の左下肢痛、痛みの程度や場所が変わるようです

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左下肢痛が一年来続いているという60代男性のお話です。

一年ほど前から、とくにきっかけもなく左腰〜左下肢が痛くなりました。よく左ふくらはぎがつるようですが、昨日は右ふくらはぎがつってそのときにグーッと両脚を伸ばした後、左下肢痛が少し改善しています。
これまでいくつかの整形外科にかかったのですが、どこでも同様に診断を受けて鎮痛剤の処方と物療などのリハビリ治療だったようです。今回、たまたま私のお知り合いの方から勧められ、かなり遠方から来院されました。
日常生活での症状の変化があり、痛みの場所も少し変わります。長く歩くと症状は増悪し、右を下にして右肘をついた右手枕で横になっているときが比較的症状が軽いようです。

レッドフラグはなく、単純X線検査でも軽度の変形などを認めますが、特に動かすことが問題となるような病変は見られません。

本日はいくぶん症状が軽くなっているのですが、よく伺うと座っている状態での左脚の付け根の違和感がはっきりとありますので、これをベースラインとして評価を続けます。

座る姿勢は猫背ですが、姿勢を矯正して保持しても特に変化はみられません。

腰椎の可動域検査ではいずれの方向も中等度に制限されていますが、いつもの痛みは再現できません。もともと体は硬いようです。

お仕事、日常生活でもかなり座りっぱなしのことが多いようですので、とりあえず伸展する方向を選んでみます。

流し台に腰をあてて、まずは一回だけ腰をしっかりと反らしてみます。特に問題ありませんので続けて5回。
大丈夫のようですから、さらに5回、しっかりと反らしていただきます。

佛坂
佛坂

少し歩いてみましょう

B男さん
B男さん

歩くのが楽になりました!

本日はいつもより症状が軽かったので、はっきりと「いい」と言える改善がわからないかと思えましたが、歩いてみると自覚症状としてはやはり違いを感じたようです。
先ほどと同じように座ってからお伺いします。

佛坂
佛坂

さっき座っていたときにあった左脚の付け根の違和感はいかがです?

B男さん
B男さん

あぁ、今はないですね!

姿勢とエクササイズについてご説明して初回評価を終了しました。

実はこの方、この直後に海外に出張があり、その間が心配されたのですが……

初診から10日後。

B男さん
B男さん

すっかりよくなりました!

エクササイズをそれなりにやって、初診翌日にはほぼ完全に良くなったと報告を受けました。

ただ、長く歩いたときに少しだけ左ふくらはぎ辺りにしびれ感を覚えていたのですが、とにかく一年来悩まされていた「痛み」は無くなりました。

今はもう症状の再現ができませんが、歩いていて痛くなったときその場に流し台のような高さの腰の支えになる台があるとは限りませんから、そんな時にどうするのかを考えなくてはいけません。

初診時には普段全く運動していないことや年齢を考えて、流し台に腰を当てた方法を選択しましたが、今回はたったまま腰に手を当ててバランスを取りながら腰を反らしてみます。

とても上手に出来ていて痛みもありません。続けて5回、しっかりとできる限り反らしても、特に問題がないことを確認します。

姿勢、エクササイズなどご説明して2回目の評価を終わりました。

症状は良くなっていますが、姿勢を整えることやエクササイズがどの程度出来ているのか、本当に症状が再発しないのかを今後もフォローアップする予定にしています。

一年来の腰痛、左下肢痛。一般的には慢性の疼痛で、鎮痛剤の処方や物療などが選択される状態でしょう。
しかし、実際には数年来、あるいは数十年来の痛みであっても、動かすべき方向に動かすと急速に症状が改善することは決して稀ではないのです。